ストレスは脳の疲労の問題です

ストレスという言葉は
小さなお子さんからお年寄りまで
日常的に使われる言葉です。
でも、よく知られた言葉である割には
残念なことに
ストレスを正しく理解している人は
非常に少ないです。
ストレスをコントロールするには
ストレスについて正しく知らなければなりません。
こんにちは!菊地若奈です。
Contents
ストレスは心の問題ではない
ストレスが心だけでなく身体にも影響を与えていることを
私たちは体験的に理解しています。
ストレスが溜まると
- 胃が痛い
- 下痢や便秘
- 肩こり、腰痛
- 不眠
- 頭痛
- 朝起きるとき身体がだるい
- 疲れがとれない
- 耳鳴り
- PMS(月経前症候群)
などなど、人によってさまざまな体調不良が現れます。
でもストレスが原因で症状が出ていても知らず知らずのうちに
心の力で何とかしようとしているのです。
その証拠にストレスに悩んでいると
「心が弱いから」
「気合が足りない」
「自分の性格が悪い」
などと自分を責めてしまいさらに苦しくなっている方はとても多いです。
真面目に一生懸命生きようとしている人ほどそのような傾向があります。
心が弱ると身体も不調になると知りながら
心だけで何とか乗り越えようとしているわけです。
それはなぜでしょうか?
心はそんなに頼りになるのでしょうか?
ストレスは心さえしっかりしていれば大丈夫なのでしょうか?
答えはNOです。
理由はストレスは身体の反応だからです。
身体が反応した結果、心が影響を受けると考えてください。
ストレスは、心と身体両方を司る脳全体の仕組みを知らなければなりません。
なぜ身体はストレス反応をするのか?
この反応はとても動物的な反応です。
自分にとって敵と判断したものを目の前にして「闘うか逃げるか」の反応です。
敵が闘える相手であれば闘い、手も足も出ない相手であれば一目散で逃げる。
ライオンから逃げるシマウマのように。
「闘うか逃げるか」の筋肉運動を、最高のパフォーマンスで行うために
身体は次のような準備をします。
新鮮な酸素を取り込むために呼吸を早め
全身の筋肉に血液を送り込むために心拍数を上げ
ケガをしたときに出血をあまりしないように
末梢の血管を収縮させるので、手足が冷たくなります。
心臓から大量の血液を送り込んでいながら、末梢の血管が収縮するので血圧が上がります。
身体はこわばり緊張します。
敵を凝視するために瞳孔が広がり、視野は狭まります。
この身体の状態がストレス反応です。
この反応自体は、命をつなぐために備わったすばらしい反応です。
敵と闘ったり、敵から逃げるために用意されたエネルギーは
筋肉運動によって解消されます。
ライオンから逃げ切ったシマウマは、ほどなくしてふたたび落ち着いて草を食むでしょう。
現実社会にライオンがいない
ところが、私たちの現実はどうでしょうか?
シマウマにとってのライオン「敵」は何でしょうか?
少なくとも筋肉運動によって解決できる敵はいません。
だって、外を歩いていて、猛獣に出会うことはありませんよね。
せいぜい山に山菜取りをしにいったとき、クマに出くわすくらいでしょうか。
そんな体験、めったにありません。
現実社会では猛獣の代わりに
将来に対する漠然とした不安だったり
気の合わない上司だったり
クレーマーといわれるお客様だったり
山積みになった終わりの見えない仕事だったりするわけですね。
それらは筋肉運動によって解決できません。
せっかく闘うか逃げるかのために用意されたエネルギーが
筋肉運動で使われることがないので、身体に残されてしまいます。
なかなかストレス反応を消すことができません。
闘うか逃げるかの
緊張状態が続いてしまうのです。
気づかないうちに肩に力が入っていたり
呼吸が浅く早くなっていたりします。
休んでいるつもりでもきちんと休めていなくて、朝起きたら身体がだるいなんてことが起きてきます。
そうなれば肩こり腰痛も出やすくなるでしょう。
そのような身体の状態で、心はゆったりとくつろげるでしょうか。
自分と違った意見を、おおらかに受けとめることができるでしょうか。
ためしに、こぶしをギュッと握り、歯を食いしばった状態で楽しいことを考えてみてください。
なかなか難しいことがわかります。
私たちの心は、身体の状態に大きな影響を受けています。
間違ったストレス解消法
よくストレス解消法に
カラオケに行ったりお酒を飲んだり
旅行やショッピングをするなどが言われますが
身体のストレス反応を解かない限り
ストレス解消にはなっていません。
ストレスが心の問題であると考えるから、気分転換をすれば心が変わり
ストレス解消になると思われていますが、それは違います。
良く知られているストレス解消法は
一時的な気分転換にしかならず
ストレスそのものは身体にしっかり残されたままです。
むしろ懸念されるのは、このようなストレス解消法では
ストレスが深刻な状態になっているときには
かえって事態を悪化させることになるということです。
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ストレスと脳疲労
私たちの生活の中には、ストレス反応を引き起こす原因となるものが蔓延しています。
その中で適応しながら一生懸命に生きています。
気の合わない上司とは仕事では支障を来さないように気を使い、
お客様からのクレームに言葉遣いに細心の注意を払って対応し、
投げ出したくなるほど山積みになった仕事を睡眠時間を削ってこなし、
将来の不安を抱えながら不安につぶされないよう自分を奮起させたり・・・
これらのストレスの原因となる悩みは脳にとって「刺激」になっています。
脳は外界の刺激に対して適応しようと反応します。
それがストレス反応です。
刺激は嫌なことばかりとは限りません。
よくストレス解消法として言われるカラオケに行ったりお酒を飲んだり
旅行やショッピングをするなどは脳にとっては刺激です。
ストレス解消法とは言えないのです。
私たちを取り巻く生活環境は、ストレス刺激が蔓延しています。
人間関係
将来の不安
生活習慣の乱れ
それだけでなく、様々な原因があります。
脳は刺激に対して適応しようとし、ストレス反応のスイッチが入ったままです。
過剰なストレス刺激によって脳は疲労し、無自覚のうちに蓄積して行くのです。
心と体の司令塔である脳が疲れてくると心と体のバランスが崩れ
うまく働かなくなって不調が出て来ます。
生活習慣の乱れはさらなる生活習慣の乱れを呼び
日常的に心も不安定になってきます。
考え方のクセも強くなってきます。
しかし、脳の疲れが取れてイキイキしてくると
どんなに忙しくて生活習慣が乱れがちでも、快活に行動ができ
自分らしいキラキラとした輝きがあります。
人生における頑張りどころにおいて
困難を乗り越え、自分らしく生きる力を発揮し
さらに人生を成長させることができます。
それは本来私たちが持っている可能性です。
このような方は脳のケアが出来ているということです。
4つのバランスが崩れる
私たちの心と体は様々な働きが相互に協調することによって
全体としての機能が調整されていて
この微妙なバランスによって心身の健康が保たれています。
このバランスをとる機能をホメオスタシス(恒常性維持機能)といいます。
人間の生命はホメオスタシスによって、安定した働きが与えられています。
しかし、無理なストレス刺激によって脳が疲労すると
ホメオスタシスが上手く機能しなくなり
4つの体内調節機能がバランスを崩します。
1 自律神経系
交感神経と副交感神経のバランスで体温や血圧、呼吸器などの調整をしています。
このバランスが崩れると自律神経失調症になります。
交感神経は、活動に向かう働きで外に向けてエネルギーを使います。
副交感神経は休息に向かう働きでエネルギーを蓄えます。
この2つのバランスをうまく保つことが、ホメオスタシスの機能を発揮させます。
また自律神経は内臓の働きもコントロールしているので
ストレスによって胃腸の調子が悪くなるなど
内臓の不調につながりやすくなります。
2 内分泌ホルモン系
自律神経系や免疫系と連携をとりながら
必要に応じてホルモンをつくる細胞からホルモンを分泌し
代謝を促進、抑制したりしてホメオスタシスを機能させます。
この機能が低下してくると
必要な時にホルモン分泌が不足するなどホルモンバランスの乱れによる問題が起こります。
3 免疫系
自律神経系や内分泌ホルモン系などから情報を受け取って病原体を感知し
ウィルスや細胞と闘ってガンや感染症を防ぎ
ホメオスタシスとしての役割を果たします。
この働きが弱くなると、ウィルスや病原菌に抵抗できなくなるので
病気を招きやすくなってしまいます。
4 筋肉系
筋肉を緊張させたり弛緩させたりして身体の姿勢を維持したり
自律神経系、内分泌ホルモン系免疫系と連携して
ホメオスタシスを機能させます。
この働きが衰えると身体の各部位に不具合が生じて
痛みなどを発生させることにもなります。
私たちの心と体を健康に保つために大切なホメオスタシスの機能は
これらの4つの体内調節によって行われています。
感情もホメオスタシスの働きです。
怒りはエネルギーの放出であり、涙は汚れを落としてくれます。
不自然な状態を解消し、心を安定に保つ働きです。
夏の猛暑や冬の厳寒でも体温は36度の一定を保っていられますし
病気にかかると自然治癒力で治ります。
つらい経験をしても、時間がたつと心は回復します。
すべてホメオスタシスのおかげです。
ホメオスタシスは
外界の変化に自分を適応させて生きのびていくために必要な
自然界の偉大な力です。
そしてホメオスタシスを営んでいるのは
脳の中でもずっと奥深くにあるヘビやトカゲにもある原始的な脳です。
「脳幹」といいます。
脳幹は心と体の健康の土台となる脳です。
ホメオスタシスの機能を保つには、脳幹が元気であることが大切です。
ストレス解消には睡眠が効果的
ストレスは脳の疲労の問題であり、特に脳幹の疲労であること。
脳幹の疲労は変化に対応する自然界の力、
ホメオスタシスの働きを崩してしまうということはご理解いただけたと思います。
では、効果的な脳疲労解消法とは何でしょうか?
脳も臓器ですから身体の他の部位と同様に、使うと疲労するので休ませる必要があります。
日中ストレス刺激にさらされて疲れてしまった、脳を休ませること。
誰もが日常的に行っている脳疲労解消法があります。
もうお分かりですね。「睡眠」です。
嫌なことがあった日でもぐっすり眠ると心も体も回復したなんて経験したこと、ありませんか。
深い睡眠は心を癒します。
ある働く女性を対象にした調査では
ストレス対する対処法を質問したところ一番多かった回答が
「睡眠・休息をたっぷりとった」だったそうです。
睡眠の役割
- 身体の修復
- 記憶の整理
ぐっすり眠ると体が元気になり、心の葛藤は癒され
勉強や仕事の効率がアップします。
睡眠は日中の活動で酷使した脳の疲労を回復する時間なのです。
ところが、脳が疲労すると、特に脳幹がダメージを受けホメオスタシスがうまく機能しなくなり
睡眠にトラブルが生じてきます。
✔ 眠れない
✔ 寝つきが悪い
✔ 途中覚醒(夜中、早朝に目覚めてしまう)
✔ 朝起きる時間になかなか起きられない
このようなことはありませんか?
脳疲労を解消するために睡眠が必要なのに
脳疲労によって睡眠がうまく行かなくなるのです。
睡眠にトラブルがあると、心と体の健康が崩れます。
睡眠障害はうつ病の前兆としてもよく知られています。
また、脳のゴミと言われるアミロイドβは
認知症の発祥の引き金になっていることが分かっていますが、睡眠中に排出されます。
ですから睡眠トラブルによって脳のゴミが蓄積します。
その蓄積は認知症発症の25年も前から始まっていることも
最新の研究で明らかになっています。
認知症1000万人時代に突入するといわれている日本。
私たちにとって近年睡眠が大きなテーマになっています。
「睡眠」は脳の働きを左右することから
私たちの人生を左右するほど大切なものだと言えます。
眠れない日本人
睡眠は「質」と「時間」が大切です。
日本人の平均睡眠時間はとても短いです。
厚生労働省による「平成26年度国民健康・栄養調査」によると
7時間以上の睡眠を確保できている人はごくわずか。
男性では特に20~40代の睡眠が短くおおよそ80%の人が7時間を切っています。
女性でも20~30代の約74%の人が7時間未満です。
さらに、40代にいたっては男女ともに約11%の人が5時間未満しか取れていないということです。
仕事・家事・育児・介護など忙しい現役世代にとって睡眠時間を確保することは至難の業なのでしょうか。
睡眠時間を確保するのが大変な時代において
脳の疲労解消をするために睡眠のもう一つの要素である睡眠の質を高めることはとても大切ですね。
良質な睡眠を取るには
良質な睡眠を取るためにやらないほうがいいことやったほうがいいことがあります。
脳の働きにもとづいてご紹介します。
1 寝る前3時間は物を食べない
「腹八分目」とはよく言ったもので、
私たちは満腹状態だと非常に眠りが浅くなり疲れが取れなくなってしまいます。
胃に食べ物が入っていれば、脳は消化のために活動をしなければなりません。
食べ物の中でも高たんぱくや高脂質の「スタミナ食材」は一般に消化するのに時間がかかります。
疲れを取るために焼肉やうなぎを好んで食べる人がいますが
かえって脳を疲れさせてしまいます。
寝る前3時間はは何も食べず脳の活動が抑えられるようにしましょう。
帰宅が夜遅くなって疲れているときは思い切って何も食べずに寝ると思いがけず疲労回復しますよ。
2 寝る前のアルコールは止めましょう
眠るために寝酒を飲む人がいますがアルコールは睡眠の質を低下させます。
酔いが醒めて途中で眠りから覚めるとその後は眠れなくなる途中覚醒を起こしやすくなります。
質の良い睡眠を取るためにはお酒は寝る3時間前までにほどほどの量で済ませたほうがよいでしょう。
3 夜のパソコン、スマホは危険
夜眠たくなるのは睡眠ホルモンといわれる「メラトニン」が分泌されることによります。
ところが、パソコンやスマホから出されるブルーライトはメラトニン分泌を大幅に抑えます。
夜この光を浴びるとメラトニンが十分に分泌されず
睡眠障害が起きたり体内時計を狂わせてしまう危険性があります。
実際、20歳前後の若者で深夜にブルーライトを増強して
タブレットを使用する実験を行ったところなんと、
メラトニン分泌量が使用開始1時間で約50%、2時間で約65%抑制されたという報告もあります。
パソコンやスマホは寝る30分前にはやめたほうがいいでしょう。
4 精神疲労にはぬるめのお風呂、肉体疲労は熱めのお風呂
精神的な疲労を癒すにはだいたい38~39度くらいのぬるめのお湯にゆっくりとつかりましょう。
逆に肉体的に疲れたと感じた日には熱めのお湯に短時間で入ったり
シャワーを短めに浴びたりすると疲労がずいぶん取れます。
5 部分的な体の疲労があるときには10分ほど散歩をしてから寝る
目や身体の偏った部分だけを酷使した日には
そのまま寝るよりも10分ほど散歩してから寝るほうが
翌朝の疲労の解消度が5割以上増すという研究があります。
局部的な疲労をしたまま寝てしまうよりも
疲労を全身化させたほうが自然治癒力が活性化することが分かっています。
6 寝る前に今日の良かったことを3つ探す
寝る前はネガティヴになりがちです。
嫌な出来事があった日にはそのことを思い出してしまい
怒りや後悔などネガティヴな感情になりがちです。
寝る前はあえて一日の中で嬉しかったこと、楽しめたこと、快く感じたことを思い出してください。
3つで良いです。
「お昼ごはんが美味しかったな」「あの同僚と気持ちよくあいさつで来たな」など、簡単なことで構いません。
一日を振り返って良い事を探しているうちに気持ちよく眠りにつけます。
7 電気を消して寝る
皮膚は光を感じています。
人間は本来、暗くなると眠り明るくなると起きて活動する動物です。
寝る前は照明を暗めにすると自然と眠気がやってきます。
寝室を「暗め」にして寝た人と「明るめ」に寝た人たちを対象にした最近の研究では
「明るめ」の人たちは「暗め」の人たちの約1.9倍、うつ症状を起こしやすかったという結果が出たということです。
寝る時は部屋を暗くして寝ましょう。
8 朝日を感じる
朝日を浴びると体内時計が規則正しくリセットされ心も体も活動モードになります。
朝活動モードになることは夜眠たくなるために大切です。
もし天気が悪かったり冬で起きる時間がまだ暗がりの時は、明るい蛍光灯を付けるだけでも構いません。